「商売繁盛で笹もってこい♪」の掛け声で知られる「えべっさん」こと恵比寿神。
毎年1月の十日戎(とおかえびす)には、多くの人が神社を訪れ、縁起物を授かって新しい1年の福を願います。
でも、「福笹って何?」「吉兆にはどんな意味があるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
この記事では、えべっさんの縁起物の種類とそれぞれの意味(ご利益)をやさしく解説しながら、選び方や飾り方、神社ごとの特色まで丁寧にご紹介します。
これから縁起物を授かろうと思っている方や、正しく飾って福を招きたい方にぴったりの内容です♪
えべっさんとは何か?十日戎・恵比寿さまの由来とご利益
恵比寿さまのルーツ/名前の由来
「えべっさん」とは、七福神のひとり「恵比寿(えびす)さま」の親しみを込めた呼び名です。主に関西地方では「えべっさん」と呼ばれ、商売繁盛の神様として厚く信仰されています。
恵比寿さまは、右手に釣竿、左手に鯛を抱えた姿で知られ、海の神・漁業の神であると同時に、商業や農業の守護神でもあります。実在の人物とする説(事代主命など)や、神話上の神とする説など諸説ありますが、「笑顔の神様」として広く親しまれている存在です。
十日戎とはいつ・どこで行われるか
「十日戎(とおかえびす)」とは、毎年1月10日前後に行われる恵比寿神社の例祭で、特に商売繁盛を願う人々で賑わいます。
関西地方、特に大阪・兵庫・京都では非常に盛んで、代表的な神社には以下のようなものがあります。
- 大阪:今宮戎神社(えべっさんの総本社とも)
- 兵庫:西宮神社(福男選びで有名)
- 京都:京都ゑびす神社(通称:京のえべっさん)
この三日間(9日「宵戎」、10日「本戎」、11日「残り福」)に、参拝者は福笹や縁起物を授かり、1年の福を願います。
主なご利益(商売繁盛・大漁満足など)
恵比寿さまのご利益として有名なのは、やはり「商売繁盛」です。もともと漁業の神様であったため「大漁満足」も大きなご利益の一つ。また、笑顔と共に金運や人間関係の円満、事業の成功などももたらすとされ、経営者や商人にとって特に重要な神様です。
また、神社によっては家内安全や交通安全、五穀豊穣なども祈願でき、企業だけでなく家庭にもご利益があるとされています。
縁起物の種類とそれぞれの意味(ご利益)
福笹と吉兆(小宝)の飾りもの
えべっさんの象徴的な縁起物といえば「福笹(ふくざさ)」です。青々とした笹の葉は、生命力や繁栄を表し、そこに様々な「吉兆(きっちょう)」と呼ばれる小宝を飾りつけていきます。
吉兆には多くの種類があり、それぞれ意味を持ちます。例えば、小判は金運、鯛は「めでたい」に通じて慶事、米俵は豊穣と収入安定、など。福娘と呼ばれる女性たちが福笹に吉兆を丁寧に結びつけてくれるのも、十日戎ならではの風物詩です。
熊手・福箕・宝船などの大型縁起物
福笹のほかに、目を引く大型縁起物として「熊手(くまで)」「福箕(ふくみ)」「宝船(たからぶね)」などがあります。
- 熊手:幸運をかき集める意味。関東では主流な縁起物で、商売繁盛の象徴です。
- 福箕:収穫物を入れる農具に由来し、福をすくい取る意味を持ちます。
- 宝船:七福神が乗る船をかたどったもので、様々な宝物が詰め込まれています。
これらはどれも「福を招き入れる」道具として尊ばれ、大きさや豪華さでインパクトを競う参拝者も少なくありません。
小判・鯛・打ち出の小槌などの象徴的陳列物
福笹や宝船に飾り付ける「小判」「鯛」「打ち出の小槌(こづち)」などは、縁起物としても非常に人気があります。
- 小判:金運上昇・事業繁栄の象徴
- 鯛:語呂合わせで「めでたい」、喜びや祝福のシンボル
- 打ち出の小槌:一振りで願いが叶うとされ、成功・願望成就の象徴
いずれも視覚的にもわかりやすく、豪華さとおめでたさを演出してくれる縁起物です。
その他:末広・米俵・臼など
その他にも、多種多様な吉兆が存在します。
- 末広(すえひろ):扇子のこと。末広がりの形から、将来の発展を象徴。
- 米俵:五穀豊穣や経済の安定を表し、昔ながらの繁栄の願いが込められています。
- 臼(うす)と杵(きね):餅つきに由来し、家内安全・繁栄を表す吉兆。
これらは神社や地域によって多少異なる場合がありますが、どれも人々の願いが込められた大切な飾りです。
縁起物の飾り方・選び方・使い方のポイント
選び方のコツ(サイズ・予算など)
縁起物を選ぶ際のポイントは、「ご自身の願いに合ったものを選ぶこと」と「予算と相談して無理なく選ぶこと」です。
たとえば、事業の成功や売上アップを願うなら、商売繁盛に特化した「熊手」や「打ち出の小槌」が人気です。家庭の安全や家内円満を願うなら、「末広」や「米俵」など穏やかなご利益のある飾りも良いでしょう。
吉兆は個別に追加購入できるため、予算に応じて少しずつ縁起物を充実させていくのもおすすめです。また、初めての方は福娘に「おすすめは?」と相談すると、丁寧に案内してくれます。
飾る場所と方角・手入れの仕方
縁起物を持ち帰ったら、なるべく目立つ場所、清潔で明るい場所に飾るのが基本です。
よく選ばれる場所は次の通りです。
- 商売をしている方:店の入口、レジ付近、事務所の神棚
- 一般家庭:玄関、リビングの棚、仏壇の近く
飾る方角に決まりはありませんが、「東」「南」など明るい方角に向けるのがよいとされています。方角よりも、気持ちを込めて丁寧に飾ることが大切です。
手入れはときどきホコリを払う程度で構いませんが、気づいたときに気持ちを込めて清掃することで、縁起物のパワーもより発揮されると言われています。
年末年始や十日戎時期の授与・返納方法
縁起物は1年ごとに新しいものに取り替えるのが基本です。前年の縁起物は、神社に設けられた「納め所(古札納所)」に返納します。これは「お焚き上げ」され、感謝とともに浄化されます。
返納のタイミングは、次のような時期が一般的です。
- 十日戎の期間(1月9日〜11日)
- 年末〜新年の初詣時期
古い縁起物をそのまま捨てるのは避け、必ず神社で感謝の気持ちを込めて返しましょう。どうしても神社に行けない場合は、白い紙で包み、塩で清めてから処分する方法もあります。
地域差・神社による特色
関西 vs 関東の熊手の違いなど
縁起物の中でも、「熊手」は地域によって大きな違いがあります。
関東では熊手が主役ともいえるほど盛んで、酉の市(とりのいち)で華やかな装飾の熊手が売られています。一方、関西では「福笹」が主流で、熊手はあくまで吉兆の一つとして扱われています。
関東の熊手は竹製の枠にびっしりと縁起物が飾り付けられ、まさに「運をかき集める」象徴。関西では、青々とした笹に吉兆を結びつける形式で、よりナチュラルで素朴な印象があります。
このように、同じ「商売繁盛」を祈る文化でも、地域ごとにスタイルや意味合いが異なります。
有名な神社の縁起物の特色(今宮戎、西宮戎、京都ゑびすなど)
関西には「えべっさん」の総本社ともいえる神社がいくつかあり、それぞれに独自の特色があります。
- 今宮戎神社(大阪)
「商売繁盛で笹もってこい♪」の掛け声で有名。福娘による福笹授与が大きな魅力で、吉兆も種類豊富。とくに商人からの信仰が厚い神社です。 - 西宮神社(兵庫)
「開門神事福男選び」で全国的に知られる神社。福笹に飾る吉兆のバリエーションが多く、大型の宝船や福箕も人気。 - 京都ゑびす神社(京都)
古都ならではの厳かな雰囲気が魅力。七福神の御朱印を集められるコースもあり、観光と信仰を兼ねた参拝者が多いです。
それぞれの神社で扱う縁起物の種類や飾り方も若干異なるため、訪れるたびに違った楽しみがあります。
値段・授与時期の差
縁起物の値段は、神社やサイズ、吉兆の数によって変わります。
おおよその相場としては、
- 福笹(基本):1,000円〜3,000円程度
- 吉兆(1つあたり):300円〜1,000円前後
- 宝船・熊手など大型:5,000円〜数万円超
授与される時期は、基本的に十日戎の期間が中心ですが、大型神社では年始から節分ごろまで授与していることもあります。
また、十日戎の「宵戎(9日)」「本戎(10日)」「残り福(11日)」それぞれで参拝者の賑わい方や雰囲気も違うため、複数回訪れる人も少なくありません。
まとめ
えべっさんの縁起物は、ただの飾りではなく、人々の願いと祈りが込められた「福を招くしるし」です。福笹に吉兆を結ぶことで、自分だけの願いが込もったお守りのような存在になり、1年の商売繁盛や家内安全を見守ってくれます。
地域や神社によって縁起物のスタイルや意味は少しずつ異なりますが、大切なのは「気持ちを込めて選び、丁寧に飾る」ことです。選ぶ時は、福娘や神社の方に相談しながら、自分の願いに合った吉兆を見つけてみましょう。
また、1年ごとに新しいものに交換し、古い縁起物には感謝の気持ちを込めて返納することも、福を継続して招く大切な習慣です。
日本ならではの文化として根付く「えべっさん」の縁起物。正しい意味や扱い方を知って、大切な1年をより良いものにしていきましょう。